私は生まれて数分も経たない息子と初対面した際、顔から体まで各パーツがきちんと正常についていることを確認し、おちんちんを見せながら停留精巣(玉が袋まで降りてきていない)と告げれられました。
その瞬間は息子が無事生まれたことへの興奮と喜びでいっぱいでしたが、やはり大事な部分なので、色々心配したことを覚えています。
また、生後2週間くらい経ち、オムツを変える際に興奮して泣いているときに下腹部がぷく〜っと腫れ上がっているのを発見し、鼠径ヘルニア(脱腸)であることもわかりました。
停留精巣も鼠径ヘルニアも比較的よくある先天性疾患なので、ネットで調べればすぐに情報を得ることができます。
しかし、どう病院に通ったか、体の状態はどうだったか、手術はどうするのかなど、自分の息子は今後どう向き合っていくことになるのかな?という不安が常にありました。
今回は私と同じような境遇の人に息子の経験した内容を共有したいと思います。
※陰部の写真は載せられませんが、ご了承ください。
・停留精巣と診断されたお子さんの親族の方
・鼠径ヘルニアと診断されたお子さんの親族の方
・赤ちゃんの病気や手術について不安に思っている方
停留精巣とは
精巣は胎児期にお腹の中で発生し、出生近くに下腹部側方にある鼠径管(そけいかん=腹部と太ももの間に走る管)を通って陰嚢(いんのう)内まで下降していきます。出生時の男児において、精巣の下降が不完全で陰嚢内に触知しない状態を「停留精巣」といいます。新生児期に5%前後にみられますが、1歳頃には1.5%前後の頻度になります。生後6ヶ月までは自然下降が期待できると言われています。
引用:日本泌尿器科学会HP
停留精巣の原因はわかっていませんが、いわゆるキンタマ(=精巣)が本来はお腹の中から、おちんちんの袋(=陰嚢)まで降りてくるはずが、降りてきていない状態を停留精巣と言います。
停留精巣の影響
停留精巣の患児が将来子供をつくる能力(妊孕性:にんようせい)は手術で治療しても片側で70~90%、両側で30~65%程度とされます。より早期の手術治療で妊孕性低下を防ぐという考え方もあり、専門医と相談するとよいでしょう。また、停留精巣は通常の陰嚢内精巣に比べて悪性腫瘍(精巣腫瘍)の発生が3~4倍程度高いとされています。
引用:日本泌尿器科学会HP
体温より1〜2℃低い環境が精巣にとって良いから、陰嚢に位置していますが、腹部に停留していると、体温と同じ温度になり、精子形成能力低下や悪性腫瘍の可能性が高まるそうです。
停留精巣の治療
診断される時期にもよりますが、まずは自然下降を待ちます。
それが期待できなければ6ヶ月〜24ヶ月の間に手術することになります。
手術の内容や入院期間などは停留精巣の状態次第で変わります。
息子の経緯

ここからは私の息子が生後すぐ診断を受けてから、生後12ヶ月で手術するまでの経緯、そして術後の様子を記載します。是非、参考にしていただきたいと思います。
生後0〜2ヶ月(韓国)
息子は韓国で帝王切開で生まれました。生まれてすぐの身体チェックで精巣が降りてきていないと告げられました。その時、看護師に言われたことは、すぐ降りてくると思いますので、様子見ましょうとのことでした。
退院するときに、小児科のA先生から、まだまだ様子見でもいいですが、気になるなら泌尿器科へ行ってくださいと告げられました。自分でも色々調べて、まだ焦る必要はないと思ってました。
しかし、2週間くらい経った時、泣いている間に右下腹部がすごく膨らんでる(泣き止むと元に戻る)ことに気づき、心配になり、泌尿器科に行きました。(後に脱腸とわかりましたが、当時は焦りました。)
泌尿器科のB先生は小児用エコーはなく、触診だけしてもらいましたがどこに精巣があるかわからないとのこと。
ここでも同じく、一般的にはまだ自然下降の可能性あるから気にしなくていいけど、大きな病院行ってもいいですよと言われました。
泣いた時の右下腹部の膨れについても特になんだろうねという感じでした。
結局、まだ色々焦る必要はないかなということで、様子見という判断をして、日本へ帰国しました。

韓国のA,B先生は明らかに停留精巣や脱腸の知見や経験がなかったです。生後まだ間もないので、どうすることもできないですが、きちんと詳しい先生に診てもらうべきだったと思います。
生後3〜11ヶ月(日本)
日本に帰って、小児科のC先生のところで3ヶ月検診を受けた際に、停留精巣を指摘されていることを伝えました。
そこは小児用エコーを持っていたので、きちんとお腹に精巣があることを確認してもらいました。
ただ、だいぶ右側が奥(上側)にあるから、すぐに大学病院(数十件/年の手術実績のある小児外科のD先生)に行くよう紹介されました。
D先生は触診のみでしたが、ここに精巣がきちんとありますね、と瞬時に判断し、両側停留精巣と正式に診断されました。
また精巣が陰嚢にないので、陰嚢が全然育っていないと言われました。
D先生から説明を受けた内容
- 9ヶ月までは自然下降を諦めない
- 自然下降しなければ1歳になったタイミングで手術
(遅すぎると精巣に悪影響の可能性、早すぎると精巣の血管が伸びない=袋まで下ろせない) - 鼠径ヘルニア(=脱腸)の併発の可能性有り
(下腹部の膨張がすぐに戻る場合はOK。戻らないor子どもの容態が悪くなったらすぐ病院へ。)
生後4,6,9ヶ月とD先生に診てもらい、触診してもらいましたが、精巣の状態に変化なし。
脱腸も変わらず起きていたので、生後9ヶ月のときに手術を決定し、手術に備え、1度血液検査をしました。

日本に帰ってすぐにC先生がだいぶ慌てて、D先生を紹介したので、私も正直すごく心配しました。しかし、経験豊富なD先生に診てもらい、優しく丁寧に説明してもらい、すごく安心しました。
手術:生後12ヶ月(日本)
手術は1歳の誕生日前後ではしたくなかったので、生後12ヶ月+1週間のときに行いました。
手術4日前
通常通り検診と以下の検査だけ行いました。
手術に向けた事前検査
- 血液検査
- コロナ検査
- 検尿
- 心電図
- 胸腹部レントゲン
だいぶ検査ばかりで息子も怖がって暴れてしまい、心電図を取るのに休憩込みで2時間かかりました。
手術(入院:2泊3日)
手術のための入院は2泊3日でした。妻が付き添いで一緒に入院しました。
1日目(事前入院)
10時から事前入院し、この日はD先生と話す程度。この日はいつも通り元気です。
晩ごはんも普通に取りましたが、それ以降の固形物は禁止。ただし、ミルクはOKだったので、夜中に1回ミルクを飲みました。



妻が付添い入院しましたが、ベッドはシングルサイズを子どもと一緒に利用、ご飯は院内コンビニ、お風呂は予約制、外にも出れず環境的には大変です。2泊3日と短いので私達の場合はよかったですが、長期入院となると本当大変です。
2日目(手術日)
9時からの手術だったので、朝ごはんも取らず、朝7時に起きて、8時半ごろに手術室に行きました。
手術室で全身麻酔→準備が整ってから手術開始→両側で1時間半程度とのことでしたが、実際には術後処理などもあるので、手術室に入ってから病室に戻ってくるまで約2時間半程度でした。
手術内容
- 左右両側とも、下腹部と陰嚢に数cmの切る。
- 下腹部側は本来、精巣が陰嚢まで降りる鼠径管や腹膜を処理。
- 精巣に繋がっている血管、精管を傷つけないようお腹から下ろして、陰嚢から出す。
- 陰嚢の外側から精巣と陰嚢を固定するために縫う
- 精巣を陰嚢内に戻す
- 縫合は下腹部はも陰嚢も溶ける糸(=抜糸不要)
両側停留精巣と鼠径ヘルニアの手術ですが、鼠径ヘルニアの手術は下腹部処理のところに含まれています。

手術が無事終了し、部屋に戻ってからも異常はなかったですが、全身麻酔で手術したので、ずっとだるそうにしてよく寝ていました。
立ち上がるのは可能ですが、少ししんどそうで、時折傷口を抑えて痛そうな顔でぐずっていました。
またご飯は昼から食べてよいとのことでしたが、昼も夜も2割3割しか食べれませんでした。

3日目(退院日)
何事もなくぐっすり寝たので、手術の翌日というのに、元気に立ち上がって、いつも通り飛び跳ねていました。
朝食も7割程食べ、D先生に手術跡を診てもらい、異常もないので、10時すぎには退院しました。
術後の様子、生活について
- 元気であれば、走ったり、座ったりなにかに跨がったりしてもよい
- 外出も全然問題ない
- 傷口に防水テープを貼っているので、長風呂は禁止。できればシャワー
- 1週間後の再診まで防水テープを貼っておくこと(剥がれたら仕方ない)
- 陰嚢の縫い目が内出血のようになりやすいがすぐに収まるから気にしなくて良い
退院後は数回、傷が痛いのか気になる仕草をしていましたが、機嫌もよく、遊んであげるとずっとニコニコでした。

本当子どもの回復力は驚きです。翌日から元気にしてくれたので今までの心配が一気になくなりました。
手術後経過
退院した日と翌日は特に外出もせず家の周りの散歩と家の中で遊んでました。
ご飯もしっかり食べられるようになったので、2日後からは普通に外出しました。
術後4日に1度だけ、傷口を痛がるような仕草をしましたが、それきりでした。
陰嚢のところもD先生に言われた通り内出血のようになり、1週間ちょっとで収まりました。
手術後1週間の日に診てもらいましたが、問題なし。
術後1ヶ月にも診てもらい、問題なし。この頃には傷跡はわかりますが、徐々に馴染んで全然目立たなくなりました。
元々小さな陰嚢も急に精巣が入って、ぷくっと膨らんでいるという感じですが、これからどんどん皮も成長して伸びてくるようになるとのことでした。
また脱腸の方も手術後は泣いたり興奮しても一切膨らまなくなりました(当然ですが)。
今後は年1で診てもらうことになりました。

後は精巣が正常に発達してくれるのを待つのみです。特に妊孕性については思春期頃にならないとわかりませんし、思春期の子に検査させるのも難しいですね。。。。
費用
住んでいる自治体は小児医療は無料なので、診察代、各検査代、手術代すべて無料で大変助かりました。
停留精巣(鼠径ヘルニア含)にかかった費用
- 大学病院への交通費(片道220円)×回数分
- 入院時の食事代(1840円)
まとめ
子どもが健康で生まれてきて、喜んでいたところに停留精巣だったので、色々悩みもしました。
精巣なので、将来のことを考えると不安はまだなくなりませんが、D先生がいつも優しく丁寧に接してくれて、手術も問題なく終えていただいたおかげで、本当に救われました。感謝しか有りません。
当分は特に何も心配することなく普通に暮らすのみですが、子どもには最初から隠さずに伝えて、思春期頃にきちんと正常であることを確認するまでは検査するつもりです。
子どもの入院は心配も苦労も大人の倍以上だと思います。今回の息子の経験を共有することで、不安が少しでも和らいでもらえたら嬉しいです。